🌸伏見稲荷大社主祭神・宇迦之御魂大神様はどのような神様? その①大神様の系譜、御神名の由来について
皆さま、こんにちは。光明稲荷 神職 髙野みどりです。
ささやかな御神殿ではありますが、伏見稲荷大社より稲荷大神様の
ご分霊をご奉斎させて戴いております。
まだまだ、未熟者で至らない点も多々ございますが、
様々な事を学ばせていただきながら、随神の道、精進努力で
一生懸命に日々、歩んでおります。
どうぞよろしくお願いいたします。
さて、今日は、私の守護神様であられる京都伏見稲荷大社の主祭神
「宇迦之御魂大神様 (うかのみたまのおおかみさま)は
どのような神様なのか?」 その①として、
「大神様の系譜、御神名の由来について」をお話しさせて戴きたいと思います。
宇迦之御魂大神様は、一般的に「お稲荷さま」と言われている神さまの事です。
御名は「宇迦之御魂大神さま」です。
(※稲荷大神様は他にも沢山の神社でご祭神としてお祀りされております。
御神名は様々な漢字・読み方となっておりますが、稲荷大神様でございます)
さて、宇迦之御魂大神さまは何でも叶えて下さるお力をお持ちで、
伊勢神宮の外宮の豊受さまとご同体の神様であられ、稲魂の神さま
五穀豊穣の神さまです。
一般的には商売繁盛の神さまとして知られておりますね。
古事記や日本書紀にも登場する列記とした正神界の神さまで、
須佐之男命と神大市比売命(カムオオイチヒメノミコト)との間に
大年神(オオトシノカミ)についで生まれた御子です。
つまり、天照大御神さまはおばさまにあたる訳ですね。(*^-^*)
古代より米作りを主流としている日本国民にとってはとても
大事な神さまなのです。
昔、日本人は農耕民族である事が主流でしたから、豊作を神さまに祈りました。
そして、江戸時代辺りになってくると、商人の力が強くなってきました。
段々、神さまへのご祈願が「豊作→商売が繁盛する事、裕福になる事」
になって行き、商売繁盛の神さまという風に一般に広がっていった訳なのです。
江戸のあちこちで身近な神さまとして親しまれたお御魂分けされたお稲荷様を屋敷神、
鎮守神または寺社の境内神、路地裏の流行り神としてお祀りする方がとても増えて来て、
より一層庶民に愛される神さまとして広がって行ったのです。
そして、日本各地にお稲荷さまとして多く祀られています。
今日は神様の由緒来歴等についてもう少しお話ししようと思います。
「ウカノミタマ」の言葉については諸説ありまして、肥後和夫先生の
伏見稲荷大社・朱十号に掲載された記事の中のお言葉を少し抜粋させて
戴きますと
「比較的新しい時代に作られたようで発生した正確な年代は明らかではない。
稲についての嗜好の中から発生し、それが強くイナリに結びついて出来た言葉であろう。
「イナリ」という言葉と「ウカノミタマ」と言う言葉には直接の場所や結びつきは
ないようで祭祀関係者の間で考えられた言葉では無く外の場所で考えられたものと思われる。
神の世界の整理統合が行われていくうちにウカノミタマの観念があらわれたのではなかろうか」
との記述がありました。
神様の御神名の成り立ちや経緯には本当に複雑怪奇で分からない事が多々ありますが
「宇迦之御魂之大神様」の御名もどうもそのようですね。
また、古事記では「須佐之男命」と「神大市比姫(かむおおいちひめ)」との間に
生まれた神様と記されており、この両神様の間には兄弟神として
「大年神(おおとしのかみ)」という神様もおられます。
この大年神様の「年」と言う字は「稲」を意味しており宇迦之御魂之大神様の
「宇迦」も稲を中心とする食物を意味しているようです。
皆さまがよく御存じの天照大御神様と須佐之男命はご兄弟神ですので
「天照大御神様」と「宇迦之御魂之大神様」とはとても近しい間柄と言えますね。(^ ^)
けれども「日本書紀」では、ちょっと伝承が異なっているんです。
また混乱してしまいますが。。。(x x;)
ある一書には「伊弉諾尊(いざなぎのみこと)」と「伊弉冉尊(いざなみのみこと)」
が飢えて気力の無い時に「倉稲魂命(うかのみたまのみこと)」を生んだという
記述があります。
御神名の「倉稲魂命(うかのみたまのみこと)」に「稲」の字が用いられている
という事からやはり稲を中心とする食物の神様だという事が分かります。
古代の日本人の農民達はそれぞれの家にホコラを作り、その中に稲の穂を積み重ねて
ご神体としてみなして祀っていたのではないかと言われており、
つまり「倉」の字が用いられているのは稲を収めた倉に祀る神様を意味していると考えられます。
又、このご神名は別の一書には「宇介能美柁磨」と読むべき事が記されて
おりますので「宇迦之御魂之大神」とは同一神のようですね。
その他の記述として「古事記」では、「伊邪那岐命(いざなぎのみこと)」が
「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」に高天原(たかまのはら)を統治する様に
命じられた際に御頸珠(みくびたま)を授けました。
この御頸珠は「御倉板挙之神(みくらたなのかみ)」と言う御神名である事が
記されています。
この「御倉板挙之神(みくらたなのかみ)」も「倉」という字がありますので
倉に祀られる稲魂(いなだま)であろうと考えられます。
つまり「宇迦之御魂之大神」と「御倉板挙之神(みくらたなのかみ)」は
同一神であろうとする説もあります。
又、「延喜式」祝詞の「大殿祭(おおとのほがい)」では家屋を意味する
「屋船」の語が附された御神名で宮殿を構成している木材の神であります
「屋船久久遅命(やふねくくのちのみこと)」そして、葺かれている稲藁の神
であります「屋船豊宇気姫命(やふねとようけひめのみこと)」の神々に宮殿の
平安を祈願しております。
この「屋船豊宇気姫命(やふねとようけひめのみこと)」には
「是稲魂(これいなだま)なり。俗の詞(ことば)に
「宇賀能美多麻(うかのみたま)」と注記がされており
つまりは「屋船豊宇気姫命(やふねとようけひめのみこと)」は
「宇迦之御魂之大神」と同一であるということが記されています。
これ等の神様の御名は地鎮祭の時等に祝詞で読み上げておりますので
ご存知の方も多いかと思います。この際には「命(みこと)」ではなく
「神」の御名で祝詞を奏上いたします。
(この「命」と「神」の違いについては又、別の機会にお話しさせて戴きます。)
この様に稲を代表とした穀類の神様は「宇迦之御魂之大神様」以外にもとても
多くいらっしゃいます。
食物を意味する「ウカ」や「ウケ」「ケ」という語を中核とする神名を持つ神には
「保食神(うけもちのかみ)」「大気都比売神(おおげつひめのかみ)」
伊勢神宮の外宮の「豊受大御神(とようけのおおみかみ)」
「若宇加能売命(わかうかのめのみこと)」等があります。
この様に様々な見解や伝承がありますが、お話ししましたように
「宇迦之御魂之大神様」は由緒正しき正神界の神様であられる事、
日本人にとってとても大切な稲の神様であられる、
つまりは五穀豊穣の神様なのです。
様々な見解があろうかと存じますが、一般的な書籍・資料などから
抜粋させていただき書かせていただきました。
少しでも、多くの皆さまに宇迦之御魂大神様の事を知っていただくための
ご参考の一つになっていただければ、とても嬉しく存じます。
その他にもまだまだ色んな見解の書籍は沢山ございますので、
又、見聞を広げるために更に勉強を続けていこうと思っております。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。